【塾コラム vol.4/どうやったら伝わるの?って質問に答えてみる。】

写真は先日生徒への立体図形の体積の出し方を説明するために使ったものの切り抜き。

ある生徒から質問された。ある友達が分からない数学の問題がある。とっても数学が得意な友達がこうだと答えをある友達に教えているのだけど全く伝わっていないようで、お互いイライラしている感じが・・・ただ自分もそもそも問題が分からないので教えてほしい、との質問だった。

とりあえずLINEのやり取りを見せてもらうと・・・確かに数学が得意なお友達は問題に図示されている平面図形をしっかり立体でイメージできていて、どんな図形ができてどこが底面となり、どこで高さを取れるかの想像が完璧にできている。分からなくて質問したお友達からすれば、こうでしょと言われても・・・それが分からないという感じ。お互いが完全にすれ違い、全く違う方向を向いてしまっている感じ。

質問してくれた生徒もこの平面図形からどんな立体が生まれるのか全く想像がつかない、ということだったので、では実際にその平面を作って、実際にどんな立体にできるか試してみようと提案。実際に作った形をみながら、数学が得意なお友達の説明している内容を順を追って解説してみた。実際に立体を目にした生徒は、『あぁ、なるほど』とその説明が理解できた。

質問してくれた生徒に伝えたのは、数学が得意なお友達はもう図形が頭の中でしっかり想像ができている、でも、分からないと言っているお友達は、この図形が想像できていない。だから今のようにまずはその図形を想像できるようにしてあげると、2人のイライラが解消されると思うよとアドバイス。お友達からは、とてもよくわかるようになりました、ありがとうと伝えて下さいとのことだった。

色々な世界で、その分野に長けた方や得意な方が教える、育てるという分野ではなかなかうまくいかないということがある。実際、長く教える仕事をする中で、トレーニングや研修を担当する方向けのトレーニングやアドバイスを担当することも多いのだけど、今回の数学を例にとると、『数学ができる、得意だ』=『問題の意図している図形や式が頭の中に自然と湧いてくる』、他方『数学分からない、できない』=『問題が何を意図しているのか、どうしたらよいのか全く想像できない』という状態であることを教える側がしっかりと認識したうえで、どうやったら自分が思い描いているものを相手の方が同じように思い描くことができるか、考えることが教える・育てる力を自分自身で伸ばしていく入口ですよ、と伝えている。

自分にとっての常識は、相手にとっては常識ではない。自分が想像していることを相手も同じように想像できる訳じゃない。

そんな話をしていると、話を聞いていた他の生徒も、今の先生の話って、今の大人に足りないところですよね、きっと。と厳しい一言。

でも、自分自身がいつもどうしたら相手に伝わるだろう、相手は今どんなことを想像して話しているのだろうといつも自然と考える癖がついているのも、中学生の時に小学生の生徒の家庭教師を始めて以来、もう少しで30年近く教える・伝える・育てる仕事を続けてきたからかなと思います。生徒達のお陰ですね。